ネットワークエンジニアUshioです。
今回はネットワークエンジニアでも、意外と詳しくは知らない配線、その中でも配線長について書きたいと思います。
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LANケーブルの配線について
「LAN(メタル)配線は100mまで」
これは何となく聞いたことあると思います。ただ、その内訳って意外と知らない人が多い。
まずは用語について。ネットワーク機器から端末(パソコン、IP電話等)までのいわゆるエンド~エンドの配線を「チャネル」と呼ぶ。まずは皆が聞いたことある部分、「チャネルが100m以内」というのが基本。
その中にも配線施工には色々なお作法がある。
大きく分けて、下記の流れでご説明する。
・配線のお作法、配線構成における部材について
・各配線における配線長について
意外と知らない配線のお作法
簡易な維持増工事や、ユーザ(オフィス利用者)が中途半端に知識を持ってしまっている場合、予算に限りがあると安易にこのように指示されることがある。
「部材費安く済ませたいし、スイッチから直接パソコンにパッチコード繋いでしまってよ。15本でしょ?そっちのほうがいいでしょ。配線パネル?いらないいらない」
これが大間違いなのである。
上図の中の「パーマネントリンク」という部分に注目。簡単に言うと、施工環境、用途によって下記のように部材が違うのだ。
・機器コード/ワークエリアコード (いわゆるパッチコード)
→これはラック内や、OA床から机のパソコン向けに出てくる立ち上げケーブル。機器と直結するようなケーブルを指す。短距離接続で、且つラップトップPC等の手元で抜き差し、取り回しをするケーブル。ツイストペアケーブル(LANケーブル)の中でも「撚線」という材質を用いる。
<撚線の特徴>
・柔らかく、配線取り回しがしやすい。
・耐性に欠け、減衰しやすく長距離配線に向かない
・水平ケーブル(パーマネントリンク)
→これは主にOA床(フリーアクセス床)や天井裏を長距離配線するような区画の配線のこと。この配線の両端は基本的にRJ45オスで成端せず、メス(配線パネルやアウトレット)に成端する。ツイストペアケーブルの中でも「単線」という材質を用いる。
<単線の特徴>
・固く、配線取り回ししづらい
・耐性があり、減衰に強く長距離配線向き
補足:単線と撚線について
上が撚線。上記の特徴の通り、7本の細い銅線を「より合わせて」1芯の銅線となっている。1本ずつの銅線が細いから柔らかそうで弱そうですよね。
下が単線。1本の線で1芯の銅線。撚線に比べ1本ずつの銅線が太いので固そうで強そうですよね。
これを踏まえると「安く済ませたいから」と安易な配線にはできないことが何となくわかりますかね。
結局何が困るの??
・パッチコード(撚線)であるべき部分で単線ケーブル
→ネットワーク機器には多ければ50本程の配線が集まる。ラック内配線を綺麗におさめるためにはネットワーク機器への配線の取り回しのしやすさがとても重要。単線でやってしまってる例の写真があればいいのですが。。それは別の機会で。
ネットワーク機器回りのケーブルがぐちゃぐちゃ、後での差し替えが難しい
・取り回し優先で撚線で床下配線
→機器回りの取り回しは困らないかもしれない。だが、撚線で床下長距離配線をするとなるとやはり問題は耐久性。床下に配線する作業だけでも、”引っ張って”、”曲げて”、”また引っ張って”があるわけです。施工の過程でも切れてしまうかもしれませんね。また、減衰も問題で、本来の通信速度等のパフォーマンスも出ない可能性があるでしょう。
床下で断線しやすい、通信パフォーマンスも出ない可能性あり
結局ユーザにお金を貰わないと配線もできないので、こういったユーザ指示のもと仕方なく「推奨でない配線構成」としている現場も多いと思う。いや、実際沢山見てきたし、あえなくそういう施工をした経験もある。
配線のお作法、部材についてまとめ
・ネットワーク機器接続、ラック内の配線、デスクなどの端末機器(パソコン/IP電話)接続はパッチコード(撚線)を用いる
・床下などの長距離配線は、単線を用い、両端はラック側は配線パネル、端末側はアウトレットで成端する
1チャネルの中での各ケーブルの配線長について
さて、冒頭でも触れた配線長について。ネットワーク機器~端末機器間をチャネルと呼び、チャネルの配線長が100m以内というのが基本。上記のお作法の構成をとれば大きく間違わないとは思うが、例えば「パッチコード60m、パーマネントリンク30mで良いか?」というとダメである。
各配線長についてはISO(国際標準化機構)で定められている。※規格には他にもTIA、ANSI、IECなどなどあるが、いったん国際規格のISOを中心に知っていれば困らないと思う。
区間 | ISO | |
最小 | 最大 | |
水平ケーブル (配線パネル~TO(アウトレット)) |
15m | 90m |
パッチコード (NW機器接続or端末機器接続) |
2m | 10m |
意外と知らない部分 :最小値
今回の記事で言いたい部分はここでした。LAN配線は100mまで、と知っていても、区画のお作法や配線の最小値は知らない方も多いと思う。
パターン①
例えば良く見る。特にサーバ管理者のお客様先ではネットワーク機器の接続等は自身でされていることが多々ある。1U間隔でスイッチがマウントされていたとして、きっと”ラック内配線がきれいになるように、無駄が無いように”という勘違いで30cmくらいのなんとも可愛いらしいパッチコードでつないであることがある。
パターン②
ラックの配線パネルから一番近い島(OAテーブル)まで10mのパーマネントリンクとして単線ケーブルを配線してあることがあったりする。
これは厳密に言うと(ISO規定では)ダメなのである
パターン①ではいくら真下にマウントしてある機器でも2mのパッチコードを買ってきて、マウントバーのケーブルマネジメントに製線する。パターン②では15m以上になるように巻いておくべき。なのである。
イメージ的には、日本の公道でF1を走らせるようなもの、という感じでしょうか。長さが足りなくても、パフォーマンスを出し切れない、ということでしょう。
…あくまでISOの規定であり、現場に合った施工というのもあると思うので悪しからず。ただ、知ったうえで、可能であればユーザにもその問題を説明したうえで施工すべきだろう。
「知らずやる」のと「知ったうえでやる」のは似て非なるもの、と思いますね。
ちなみに、今回書いたのはあくまで基本であり、実はケーブル周辺温度、端末がPoE給電対象か否かでも大きく変わってくるのでご認識を。(今回は周辺20℃、PoE対象外として読んでください)
Zaco Ushio